Vol.85 観覧者数Ⅴ字回復
総務課長 田中芳樹
2018.3
当館の事業評価指標の一つである観覧者数を安定的に確保するため、魅力的かつ集客性のある企画展を開催・運営することが必要と考えて、平成28年度から報道機関との共催を実行委員会方式として実践している。
今年度になってから、少しずつだが集客性に着目した運営が実を結びつつあると感じている。
このことは、観覧者数の伸びが、平成28年度の倍数以上となっていることからも小職だけの感覚ではないものと思われる。
この成果は、実行委員会方式の最大のメリットである「共催者の優れた情報発信力の最大限の活用」と「報道機関ならではの様々な助言に耳を傾け実践すること」で、集客力が向上し、Ⅴ字回復が実現されたものと確信しており、平成28年度に初めて実行委員会方式で報道機関と共催した「野口久光シネマ・グラフィックス展」の取組みがあったことに起因するものと思う。
今年度も4本の企画展を実行委員会方式として実践したが、成功の裏には苦労話も多い。
例えば、共催者の予算編成や経理処理の考え方と当館とのギャップを感じることなどもその一例である。詳細は割愛させていただくが、赤字決算は決して許されるものではなく、黒字決算を目指して突き進むのみであることが言える。
黒字決算に向けてどう取り組むか、それはつまり、いかに県民に足を運んでいただけるかの工夫が重要であり、それが観覧者数の増加につながり、収入増にもつながると考える。
実行委員会方式の導入を継続することの意味合いは非常に大きいし、今後の県立美術館の組織運営に対する影響力は計り知れないものがあると考える。
昨今の当館の置かれている立場も開館当時と比して大分変化してきており、基本理念を重視しながらも、競争力を兼ね備えていかなければ生き残っていけないものであると門外漢ながら強く感じているところである。
助言の中には、「依然として県美は敷居が高いと言われ続けていることをできるだけ早く解消する必要がある」とも言われ、来館者アンケートでも幾度となく指摘されてきている。
県民のための美術館の運営において、この県民目線への対応は欠かすことのできない重要な要素であり、このことに真摯に向き合って対応してこそ、親しまれる「県美」の構築につながると信じている。
その対応策の一環として、今年度、「景観」にも配慮しながら、若干の表示設置工事を実施したが、このようなことで、「来館してよかった」「また来たい」などと思われる「開かれた県美」であって欲しいと切に願うとともに、このⅤ字回復が一過性のものに終わることなく、館員全員で様々な手立てを講じていきたい。
今後も、常に「おもてなし」の精神で取り組みたいとも思う。