舟越保武「LOLA」
作品詳細データ
1972(昭和47)年
大理石
40.0×40.0×22.0cm
大理石
40.0×40.0×22.0cm
この女性像のモデルは、スペインを訪れたときに親しくなった経済学者の娘ローラである。作者・舟越は彼女自身を前にして石を彫っていったのではなく、あらかじめ用意したスケッチや写真によりながら制作を進めた。その後毎年送られてくる彼女の写真をもとに《LOLA》は何体も作られた。少女から大人へと変化成長していくローラの姿とともに、この彫刻家の作風の変化も追うことができる。
1987年に脳梗塞で倒れた後、ある作品集のために寄せた舟越保武の短いエッセーには、自分の彫刻が存在するということへの省察が記されている。自らの考えの尺度にそって制作を進めることの愚かさ、種々の煩悶や苦痛を仕事に影響させてはいけない、彫刻を作る職人としてすべての煩わしさから自分を解放して仕事をしようと。そこからさらに、人は自らでは計り知れないものによって支えられるものであるならば、風に吹かれて流れ去る野の花ように自身も同じ運命をたどり、なすべき特別なことは何もない、という思いに達する。
《LOLA》が作られるようになってから、彼の作る女性像の眼差しは現実から人の心へと向けられ始めているようである。