舟越保武「青い魚」
作品詳細データ
1958(昭和33)年
ブロンズ
23.0×167.5×25.0cm
ブロンズ
23.0×167.5×25.0cm
透明で速い流れのなかを泳ぐ川魚の一瞬の姿がとどめられている。釣り好きの舟越保武は、渓流とそこに棲む生き物との関係、自然の大きさ厳しさに思いを馳せる。
年期の入った釣り師でもあるこの彫刻家は渓谷に分け入り流れに糸を投げ入れるが、どうも気の散ることが多く釣りに集中できない。自分が立つ渓流の環境の恐ろしいほどの力と底知れぬ逞ましさに圧倒され、釣りどころではなくなってしまう。傍に咲く山百合の花や蝶はそこを訪れる人のために在る訳ではないのに、その当たり前のことに感動する。流れによって削られ彫刻された岩に気の遠くなるような時間と自然の姿を実感してしまう。
この川魚の側面には、渓流の流れとそのなかを泳ぐ魚との関係を示すかのような複数の強い線が刻まれている。円い目の輪郭線は流れにそってずれたようにさえ見える。川の柳であろうかその一枝が流れに引っ張られるように描かれ、枝の先には「やがて浮子(うき)見えずふりむけば月見草」とある。