Vol.98 修学旅行、再び
総務課 常勤契約職員 佐藤真理
2021.01
2020年は、誰にとっても経験したことのない1年だったと思います。仕事や日常生活はもちろん、旅行、スポーツ、音楽など趣味や息抜きの時間もままならない日々でした。それは美術館にとっても例外ではなく、当館で予定されていた企画展のうち「ムーミン展」と「Human&Animal展」は中止となりました。楽しみにしているという声もたくさんいただいていた企画展でしたので、職員のひとりとしても本当に残念な気持ちでいっぱいでした。その後、「小さなデザイン 駒形克己展」「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」そして現在開催中の「唐武と芸術写真の時代」についてはたくさんの方にご来館いただいており、あらためて美術館で作品にふれる楽しみを味わっていただいているのではないかと思います。
そんな中、昨年とても多かったのが修学旅行でのご来館です。県内の小中学校はもとより隣県からもたくさんの児童、生徒さんが訪れてくださいました。本当ならもっと遠くへ旅行して様々な学びを体験し、たくさんの思い出を作ろうと楽しみにしていたことでしょう。しかし状況を踏まえての予定変更で、当館を訪れることとなった学校も多くあったのだと思います。自分の経験でいえば、修学旅行はエピソードばかりが思い出され、訪れた場所については正直、あまり印象に残りませんでした。もしかしたら、美術館を訪れてくれた児童、生徒さんのなかにも予定として通り過ぎただけ、という方もいたかもしれません。しかし、これが大人になってあらためて同じ場所を訪れてみると、しみじみすごいなあと思うことがあります。風景や建築物もそうですが、作品もまた然りです。あの時はなんとも思わなかったのに、あらためて目にすると、思わず感動してしまう自分に出会ったりします。もっというと、これが変わらずここにあるためにどれだけの人が尽力しているんだろう、なんてことが頭をよぎったりしようものなら、自分、大人になったなあなんてニヤリとしてしまうかもしれません。修学旅行で訪れていただいたみなさんにも、いつか再び美術館を訪れていただき、その時自分がどんな風に感じるかを体験して頂けたら、と思います。
2021年も、まだまだ自由に移動できるとは言い切れない状況が続いています。制限もある中ではありますが、今年も修学旅行先のひとつとして美術館がお役にたてれば嬉しいです。また、普段あまり縁がないなあと思われる方も、散歩がてらすぐ立ち寄れる、身近な「大人の修学旅行」の場所として、今年はぜひ美術館を訪れてみてください。