Vol.115 オンラインでできる鑑賞授業とは
学芸普及課 学芸調査員 佐々木倫生
2024.06
岩手県立美術館では、2024年からオンラインによる「デジタルアートカード」出前授業(以下、オンライン授業)を小中学校向けに始めました。
皆さんがご存知の通り、岩手県は日本で二番目に広い面積を持つ県です。そのため、遠隔地にお住まいの方々は美術館への移動に時間や費用がかかるなど、美術館へのアクセスが難しいと感じている方々は多いです。そこで、このような状況に対応し、少しでも美術館の鑑賞の機会を提供するため、費用も、移動時間もかからない方法を考慮した結果、学校現場で活用されているタブレット端末を利用したオンライン授業を実施することにしました。なお、ここで誤解を生じないようにしたいと思いますが、美術館周辺の近隣の学校でもオンライン授業は行うことができます。
美術館側の様子
学校側の様子
オンライン授業の方法は、美術館側のパソコン、学校の先生側のパソコンを「Microsoft Teams」を介して接続し、教室にあるスクリーンに美術館職員の映像を映し出します。作品を操作するアプリケーションは、「ロイロノート」を使用します。授業内容は、アートカード30枚の中から班で好みの作品を選んでもらい、画像を拡大・縮小しながら油絵具の盛り上がりや筆の筆致などを詳細に観察します。そして、作品を見ながら形や色彩について語ったり、構図について考察したりしながら、班員で多様な意見を出し合います。
タブレット端末を操作している生徒の様子
寺島貞志《窓辺のりんご》1947年 について生徒の感想
活動した生徒の感想では、「自らの考えを更に深め、他者の意見も参考にしながら美術作品の素晴らしさや考え方を改めて感じることができた」「人によって絵の感じ方が異なることが興味深かった」というように友達同士の対話を通じて、共有し合いながら、作品について深めていけることがこの活動の魅力の一つと言えます。そして、この活動は、鑑賞の入り口として非常に有効な手段だと考えています。美術館にどのような作品があるのかを、まずタブレット端末で鑑賞した後に、興味を持ち、気に入った作品を実際に美術館で見に行くことで、学習したことをさらに深めることができると思います。
今後は、立体作品をオンライン授業でどのように紹介するかなど、改良の余地がありそうです。さらなる検討を重ね、今後もより良い鑑賞授業を提供できるよう努めてまいりたいと思います。