Vol.113 本との出会い
総務課 会計年度雇用職員(司書) 佐藤沙織
2024.01
県立美術館には、一般に公開されているライブラリーと閉架書庫があり、全国の美術館で開催された図録など専門書が集まってきます。
ご縁があり、一般の方が立ち入れない閉架書庫が私の仕事場になりました。
学生の時、言葉では聞いても実際には立ち入ったことない場所。こんな機会・幸運が巡ってくるとは思いもしませんでした。
本の歴史について紐解いてみると(ありきたりかもしれませんが・・・)
紙が発明される前、エジプトではパピルス、パピルスが入手困難な土地では羊皮紙が、又、中国では竹や絹が使われていました。中国で改良・製造された紙は7世紀には仏教の伝播とともに日本にもたらされました。8世紀の終わり頃にはエジプトへ、その後アフリカやスペイン、イスラムと11世紀から13世紀にかけ広がり、13世紀中頃にはイタリアで製紙産業が成功を収めていたそうです。
本の形は、巻物、折本、冊子体と変化してきました。
古代エジプトのアレクサンドリア図書館では、パピルスの巻子本が多数写し・収蔵され、この大図書館に多くの学者が集まったそうです。中世ヨーロッパに写本が登場します。パピルスより強い素材の羊皮紙を使い冊子の形態をとり、修道士により収集・保存されました。
本は貴重なもので、鎖付き図書というのもあったそうです。
1450年頃、ドイツ、グーテンベルグの活版印刷は三大発明として有名です。現在、私たちが気軽に本を手に取れるのもこの発明があってこそでしょう。
技術が発展し、利便性が求められ拡散が効率的に可能な世の中です。
本の内容は電子化され、必要とされるものは多くの利用者からのアクセスが可能で、内容の訂正も技術的には簡単でしょう。
情報はあふれ、消費され、時に、歪められ、消されてしまう事も考えられます。
本という媒体の長所は、例えば、作家が使った言葉遣いやどんな漢字を充てたかなど、
その時、印刷したそのものが、そのまま残されるところだと思います。
毎年、多種多様な本が大量に出版されますが、流通が無くなるとなかなか手に入りづらいこともあります。又、元々、マーケットを広く設定していない本であれば、尚更です。
本との出会いは一期一会。後から探そうとしても無くなってしまえば、探せない事も。
本は、その時代の空気を切り取るもの。作家の思考を感じられるツールです。
ライブラリーはそんな本たちと出会える場所になっています。