Vol.110 バックヤード・ルート再開!美術館てくてくツアー
学芸普及課 上席専門学芸員 濱淵真弓
2023.05
当館で隔月に開催される教育普及プログラム「美術館探検 美術館てくてくツアー」。普段入れない裏側も含め、美術館の機能や建築のこだわりをスタッフから聞きながら館内を歩いて回るイベントで、当館が開館した2001年から続いている人気のシリーズです。
コロナ禍では、一時中止となり、また、復活しても、ソーシャルディスタンスの制約などから、グランド・ギャラリーを中心としたパブリックスペースのみのルートで巡らざるを得ませんでした。そのため、ご案内できる内容に限りがあり、当然、参加者からバックヤード(建物の裏方エリア)を見たかったとのご感想を多くいただき、スタッフも大変歯がゆい思いをしていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、この度、ほぼ4年ぶりに晴れて、みなさんをバックヤードにもご案内できるようになりました。早速先日、ルート再開後の1回目を開催すると、あっという間に満員御礼。この時を楽しみに待っていてくださった方もご参加くださり、こちらもほっと一安心でした。
さて、ツアーのルートはというと…吹き抜けの大空間グランド・ギャラリーから、裏方の事務所エリア、搬入口や収蔵庫前に進み、大型エレベーターに乗って2階へ。パブリックスペースのコレクション展ロビーを通り、ライブラリーでフィニッシュ。たった30分のツアーですが、様々な部屋を覗き見しながら進む、ちょっとした探検気分です。
当館が公開している館内マップには、通常、来館者にお入りいただけるパブリックスペースのみを示していますが、実はこれが美術館全体のわずか1/3。さらに1/3が収蔵庫や事務所エリア、残りの1/3が空調等機械系統の部屋なのです。ツアーでは、空調機械の部屋やエレベーターなども見ながら、作品にとって負担の少ない環境(整えられた空気、短い移動距離)が美術館にとって大切で、そのためバックヤードがいかに肝なのかをお伝えします。私自身、ご案内しながら、こういった点で当館の建物が美術館建築の理想的な作りになっていることを改めて実感しています。
岩手県立美術館に展覧会を見に来たついでに、せっかくだから建物の隅々まで楽しみたい!という方には、このてくてくツアーが最もオススメのイベント。美術館の建物を見る目がぐるっと変わること請け合いです。また、遠方でなかなか参加できないという方には、美術館ニュース「アプリーレ」の特集(※)を読みながら、仮想てくてくツアーで楽しんでみてくださいね。