Vol.106 約5cmの中に
学芸普及課 主任専門学芸調査員 住吉オリエ
2022.08
さて、皆様は美術館の広報物に目を通してくださっていますか?
私は昨年度まで中学校で美術教員をしていましたが、美術館ができてからの21年間、「美術館スケジュール」と「アプリーレ」は毎号学校に必ず届くので、いつも楽しく目を通しておりました。
その後、美術館に勤務することになった私は何とその制作に関わることに!
関わらせていただく中、多くの作業過程があることを知り、驚くことが多かったのですが、特に驚いたのは写真の扱いです。
「美術館スケジュール」や「アプリーレ」にはその頃の企画展やコレクション展の展覧会情報や講演会などのイベント情報が掲載されます。その紹介をするために写真を掲載しますが、それは約3~5cm位の小さな写真がほとんどです。しかし、この小さな写真に深いこだわりがあったのです!
まず作品ですが、美術館の学芸員だけでなく、デザイナーさんや印刷会社の方々が直接収蔵庫や展示室で作品を見て、「(作品の)この辺りに緑が入っている」「上のほうは赤が多い」「この部分は絶対に写真に入れたい」など、色や作品の雰囲気を確認します。小さな写真をどのように見せれば、本物の作品の様子が伝わるのか細かくチェックするのです。そして、出来上がった校正を何度も刷り直しては作品や図録と写真を比べて手直ししています。またイベント写真は、来館者の皆様や講演して下さった方のお写真を掲載する場合、その人が一番素敵に見えるように肌の色や背景の明るさなどを何度も調整しています。
本当に小さな写真をデリケートに、そして大切に扱っています。
いやはやこんな苦労を重ねて作っているとは。完成したものは額に入れて飾りたい気分になりましたね。知らない世界を垣間見ることができました。
と、いうことでどうぞ皆様、ぜひぜひ「美術館スケジュール」と「アプリーレ」、ほかの印刷物すべて、美術館では魂を込めて制作していますので、手に取ってご覧ください。よろしくお願いします。