Vol.105 崩しの美
学芸普及課 主任専門学芸調査員 土谷文子
2022.05
岩手県立美術館には真っ白な紙コップが、な、なんと2万個もあります。数が多すぎてピンとこないかもしれません。いったい何のために?それは、イベントで使用するためなのです。題して『タワー!タワー!タワー!』その名の通り、シンプルに紙コップをどんどん積み上げていく遊びです。5月5日のアートデオヤコ、こどもの日スペシャルで毎年開催するイベントの中の1つです。
しかし!子どもの遊びと思うなかれ、大人もハマっちゃうのです。積めば積むほど「崩したくない…」ので、真剣かつ慎重になり、心は無の境地に。出来上がったタワーは、インスタレーション作品を思わせ、美術館の空間にとっても映えます。しかし!積み上げて終わりではないのです。ここからが実はお楽しみでして、崩すのも、また楽しいのです。しかも、美しい崩し方があるのです。下の画像のように、積み上げた下のコップを1つ抜きとると、そこからスローモーションのようにゆっくりときれいに崩れてゆくのです。
その出来事は数秒でしかないのですが、それを見たいがために積んでもいいくらいの美しさ、そして儚さです。そして、崩れる時の音がまた、優しく心地よく耳に響くのです。
左の画像のように体当たりでワイルドに崩す方法もあるのですが、思ったより体当たり感はないですし、ちょっぴり罪悪感が過るので、おすすめはしません。
『タワー!タワー!タワー!』機会がございましたら、ぜひ、お試しあれです!