Vol.100 美術館と装い
総務課 常勤契約職員 釜石彩
2021.05
美術館に行く際、どんな服装で行こうかと迷う方も多いのではないでしょうか。インターネットなどで美術館の服装のマナーについて調べると、帽子の着用は控えること、バッグは邪魔にならない小さなものであること、足音の響かない靴であること、派手な色彩は控えること、などと出てきます。もちろんこれらには、他のお客様の邪魔にならないよう、また、作品保護のためといった理由があり、当館でも最低限のマナーにご協力をいただいているところとなります。
とはいえ、折角美術館という日常とは異なる空間に行くのですから、周りに配慮しつつも、普段とは異なる装いを楽しみたい方も多いと思います。その時は、展覧会のキーカラーを取り入れたり、作品をイメージさせる小物を身に着けたりするだけでも特別な気分になれますので、ぜひ取り入れてみてください。
ちなみに、当館では、職員も企画展毎に展示をイメージした装いを楽しんでいます。私が岩手県立美術館に勤め始めたのは、2019年「タータン展」開催の最中でしたが、当時、慣れない環境で余裕がないながらも、職員各々がタータン柄の小物や衣類を身に着けて、企画展を盛り上げていたことが印象に残っています。皆さまも、そのような装いにお気づきになりましたら、運営側の遊び心や企画展愛を感じていただければ幸いです。
ところで、装いといえば、過去、華やかなファッションに目を奪われた企画展があったことを思い出します。2005年開催の「エルミタージュ美術館展」です。繊細で美しいレースや装飾品の数々、個性的なデザインのドレスを纏った優美な女性たちが描かれた絵画の数々に、うっとりとため息が出たものです。このように、美術館では、作品中のファッションに着目できる展覧会も開催しています。
そこから満を持して、と言っていいか分かりませんが、2019年11月3日、文化の日の恒例イベント「美術館まつり」の中で、当館では初のファッションショーが開催されたのは皆様の記憶にも新しいと思います。この時は、「紅子が生きた時代’60年代風の装い」と題し、開催中の企画展「紅子と省三」から、深澤紅子が1960年前後に描いた作品に登場するモダンな女性像をイメージしたファッションをご紹介しました。ファッションとは、時に別の誰かを演じられるツールのひとつにもなります。作品中のファッションをオマージュすることも、美術館での装いの楽しみ方のひとつかもしれません。
岩手県立美術館では、年4回のコレクション展と年6回の企画展を開催しています。特に企画展は、それぞれで内容も雰囲気もガラッと異なりますし、今後もファッションに着目できる展示等も予定しています。皆さまも、美術館に行く際は、展覧会に合わせた装いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
2019年「美術館まつり」でのファッションショーの様子