vol.74 展覧会が終わったら、
常勤契約職員(司書) 谷地英里
2016.10
「2016年のIMA -岩手の現代美術家たち-」が閉幕しました。盛岡市中央公園の緑の中に、真っ赤な風車と黒い石炭が映える≪いわての手≫をご覧いただけたでしょうか。作者である山本英治さんのアーティストトーク当日、市民の方から作品を称賛するはがきが届きました。トークの最後に担当学芸員が読み上げるのを聴き、山本さんはもちろん、私たち職員も感激しました。
この展覧会では、学芸員以外の職員も作品搬入から撤収までのお手伝いをしました。私も、長谷川誠さんの≪森のしずく≫の搬入作業、泉田之也さんの≪交≫の制作、山本さんの≪いわての手≫の撤収作業に、少しだけ加わりました。めったに展示作業に関わることのない職員同士、「≪森のしずく≫の杉の葉は、私が挿したんです!」「≪交≫の下地のスズタケは私が編んだ!」と、自慢げに言葉を交わしました。美術館友の会ボランティアの方々と共に作業をし、「作品の制作に関わることなんて、なかなかないよね。」と、この貴重な体験について語りました。
山本さんは、「自分の作品は残らない。」とおっしゃいました。その言葉から、展覧会全体もひとつの作品ではないかと考えました。展示風景は、一定期間を過ぎるとなくなってしまいます。同じ空間で、同じように展示された作品を鑑賞することは、おそらく二度とありません。でも、いつかこの展覧会を思い出す時、あの展示室やグランド・ギャラリー、空を背景にした屋外展示が頭に浮かぶはずです。そして、作品を守る人も、展示室の状態を保つ人も、展覧会を宣伝する人も、それぞれの役目を果たすことで、展覧会という作品をつくっているように思うのです。
展覧会が閉幕すると、すぐに撤収作業と作品返却が行われます。中央公園の風車や石炭を片付け、作品のために残していた草をきれいに刈り取り、久しぶりに元の景色が戻ってきます。展示室が空っぽになるのは束の間のこと。学芸員に「IMA展、おつかれさまでした」と声をかける頃合を計っているうちに、また展示作業が始まります。もりとぴあねっと参加館による中央公園のクリーンキャンペーン(清掃活動)の翌日は、もう次の展覧会の初日です。
さあ、気持ちを切り替えて。
「BIB50周年 ブラティスラヴァ世界絵本原画展 -絵本の50年 これまでとこれから-」が開幕します。ライブラリーからもたくさんの絵本をご紹介します。どうぞお楽しみに!