vol.67 絵本『さるのせんせいとへびのかんごふさん』とわたし
常勤契約職員(司書) 谷地英里
2016.1
現在、当館では「荒井良二 スキマの国の美術館」を開催中です。荒井良二さんといえば、NHK「てれび絵本」にも登場した『さるのせんせいとへびのかんごふさん』を思い浮かべる方も多いと思います。私もその一人です。
私がこの作品に出会ったのは、公立図書館に勤めていた時でした。なんだか最近この絵本がよく借りられるなあと思い、返却された『さるのせんせいとへびのかんごふさん』を何気なく開いてみたのです。(読んでいない方のために、内容はひみつにしておきます。)すぐに他の職員に「読んでみて!」とすすめると、隣の公民館の職員や図書館常連のお母さんへと人気は広まり、その魅力について話が盛りあがり、大人の間でもちょっとしたブームになりました。素晴らしい本に出会い、その感動と興奮を仲間や図書館を利用される方と分かち合ったという、忘れられない思い出があります。
図書館の絵本は、貸出・返却カウンターでよく見る表紙と、傷み方で人気が分かります。お母さんに「またそれ?ちがうのにしたら?」とうんざりされても、子どもたちは同じ絵本を抱きしめ、何度も借りていきます。『さるのせんせいとへびのかんごふさん』も、そんなふうに愛されていました。私は心の中で、「その絵本が好きなんだもんね。何回借りてもいいんだよ。たくさん読んでもらってね。」と、ひそかにエールを送っていました。
荒井良二展をきっかけに、図書館での思い出がよみがえると同時に、私の脳裏にふとジョー・プライスさんの顔が浮かんできました。平成25年度に当館でコレクション展を開催したプライスさんは、若者たちに、「自分の好きな絵を観ればいいんだよ」というメッセージをくださいました。当時の私は、美術館に勤めるようになったものの、芸術には詳しくないしなあ…と、自分の教養のなさを恥ずかしく感じていました。プライスさんのメッセージは私へのエール、その後の指針となりました。よい作品も芸術作品の見方も分からないけれど、好きな作品なら分かります。それからは堂々と(でも謙虚さは忘れずに)展覧会を楽しめるようになりました。私が図書館で子どもたちに送ったエールが、かたちを変えて今の自分に返ってきたかのように感じています。
あの時、『さるのせんせいとへびのかんごふさん』を手に取っていなかったら、今回の展覧会を特別な記憶や想いとともに待つことはなかったでしょう。
荒井良二さんの絵本が大好きだった子どもたち(大人も)が、展覧会で懐かしい作品に再会してくれたら嬉しいです。そして、まだ荒井良二さんの作品を知らない方には、お気に入りの一枚に出会えることを願っています。
参考図書
『さるのせんせいとへびのかんごふさん』(荒井良二 え 穂高順也 ぶん ビリケン出版 1999年)
私がこの作品に出会ったのは、公立図書館に勤めていた時でした。なんだか最近この絵本がよく借りられるなあと思い、返却された『さるのせんせいとへびのかんごふさん』を何気なく開いてみたのです。(読んでいない方のために、内容はひみつにしておきます。)すぐに他の職員に「読んでみて!」とすすめると、隣の公民館の職員や図書館常連のお母さんへと人気は広まり、その魅力について話が盛りあがり、大人の間でもちょっとしたブームになりました。素晴らしい本に出会い、その感動と興奮を仲間や図書館を利用される方と分かち合ったという、忘れられない思い出があります。
図書館の絵本は、貸出・返却カウンターでよく見る表紙と、傷み方で人気が分かります。お母さんに「またそれ?ちがうのにしたら?」とうんざりされても、子どもたちは同じ絵本を抱きしめ、何度も借りていきます。『さるのせんせいとへびのかんごふさん』も、そんなふうに愛されていました。私は心の中で、「その絵本が好きなんだもんね。何回借りてもいいんだよ。たくさん読んでもらってね。」と、ひそかにエールを送っていました。
荒井良二展をきっかけに、図書館での思い出がよみがえると同時に、私の脳裏にふとジョー・プライスさんの顔が浮かんできました。平成25年度に当館でコレクション展を開催したプライスさんは、若者たちに、「自分の好きな絵を観ればいいんだよ」というメッセージをくださいました。当時の私は、美術館に勤めるようになったものの、芸術には詳しくないしなあ…と、自分の教養のなさを恥ずかしく感じていました。プライスさんのメッセージは私へのエール、その後の指針となりました。よい作品も芸術作品の見方も分からないけれど、好きな作品なら分かります。それからは堂々と(でも謙虚さは忘れずに)展覧会を楽しめるようになりました。私が図書館で子どもたちに送ったエールが、かたちを変えて今の自分に返ってきたかのように感じています。
あの時、『さるのせんせいとへびのかんごふさん』を手に取っていなかったら、今回の展覧会を特別な記憶や想いとともに待つことはなかったでしょう。
荒井良二さんの絵本が大好きだった子どもたち(大人も)が、展覧会で懐かしい作品に再会してくれたら嬉しいです。そして、まだ荒井良二さんの作品を知らない方には、お気に入りの一枚に出会えることを願っています。
参考図書
『さるのせんせいとへびのかんごふさん』(荒井良二 え 穂高順也 ぶん ビリケン出版 1999年)