岩手県立美術館

　散歩が好きです。普段車で通りすぎるだけの道をあらためて自分の足で歩いてみると、車では見えないいろいろなことに気づきます。
　盛岡市津志田交差点のファミリーレストランや衣料品店などが建ち並ぶ一画に、フェンスで小さく仕切られた場所があります。フェンスの中には大きな石が置かれ、石を取り囲むように木が植えられています。「いたこ塚」というそうです。津志田は昔遊廓が栄えていて、それにまつわるもののようです。また、いたこ塚からほど近い大國神社には、津志田遊廓に関する文化財が多数保管されていて閲覧もできるそうです。このように思いがけず地域の歴史に触れる機会を得られるのは散歩の醍醐味といえます。
　もう少し遠くへ足をのばしてみます。
　上飯岡に飯岡山という山があります。登山口から山頂まで30分程度。往復1時間もあれば楽しめる手軽な里山ですが、私の自宅（西見前）から徒歩で向かうと全行程5時間程度かかります。おやつやお弁当を持っていくのがおすすめです。途中、広い田園地帯の中の農道を通って行きます。春の水をはった鏡のような田んぼ、夏の青々とした苗が風にそよぐ田んぼ、黄金にゆれる秋の田んぼ、冬の寂しい光が静かに降りそそぐ田んぼ、どれも美しく心癒される風景です。
　また、自宅から雫石の焼肉屋さんまで歩いたこともあります。帰りは小岩井駅から電車を利用しましたが、歩行時間は4時間ほどになるので焼き肉をお腹いっぱい食べても罪悪感なし。ダイエット中の人も安心ですし、徒歩なのでビールもOK！
　道のりはスマートフォンで検索するのがおすすめです。グーグルマップのルート検索は、地元の人しか知りえない近道、どう見ても田んぼのあぜ道にしか見えない小道も完全網羅していて、なかなかあなどれません。中には雑草がまったく刈り払いされていない、けもの道のようなところを草をかき分け進まねばならないこともあり、ちょっとした冒険気分を味わえます。
　「そんな長い距離を歩くのは、私には無理…」「あの最近オープンした居酒屋、気になるけど遠くて車じゃないと無理…」それは先入観にしばられているだけです。江戸時代の庶民は1日30キロ以上歩いていたといいます。数十年前でも1日10キロくらいは歩いていたそうです。
　みなさんも散歩を自分流にアレンジして挑戦してみてください。徒歩でだんご屋さんのはしご、ラーメン屋さんの新規開拓、野鳥観察など、散歩には本当にいろいろな楽しみ方があります。