vol.15 「IMAここで」展について思うこと
主任専門学芸員 吉田尊子
2011.8
「'70、'80年代生まれの美術家たち、IMA(いま)ここで」 展示風景
今年度の岩手県立美術館のテーマである「アートのチカラ、いわてのタカラ」の第1弾展示として「'70、'80年代生まれの美術家たち、IMA(いま)ここで」展を開催中です。開幕して1ヶ月がたちますが、来館者の方にはおおむね楽しんでいただいているようです。
3月の大震災以降、岩手県立美術館としてできることは、やっぱり展覧会の開催と、ワークショップによる働きかけだということを確認してから、館内で何度も何度も話し合いを持ちました。ワークショップのほうは、5月から既に展開していましたが、展覧会のほうは7月開幕を決めてからというもの、今年一年の間にどんな展覧会をするか、それが実現可能かどうか、最低限の経費が確保できるのかどうかなど、実際に走り出すまでには更に議論と調整が必要で、総務課のスタッフも関係各所への交渉や協議に必死でした。
展示としては、まず最初に元気のいい若手作家を取り上げようということで、原田館長をはじめ、学芸員がそれぞれ注目する気鋭の若手作 家を推薦したところ、興味深いことに、学芸員がそれぞれ推薦した作家のジャンルや傾向は、ほとんど重複することなく、バラエティに富んだ人選となりました。こうして企画が具体的に固まり、最低限の開催経費の準備が出来て動き始めたのが5月も末のこと。7月開幕まで時間の余裕がなく、なおかつ予算の面でも 十分な手当が出来ない状況にも関わらず、こちらの呼びかけに快く応えてくださったのが今回の10人の作家さんたちです。
開幕まで1ヶ月を切っているなかで、作家さんから情報をあつめ、チラシを作り、作品輸送の手配をし、会場設営をする・・・確かに時間的にも精神的にも非常にタイトな状況でしたが、スタッフにも、作家さんにもいろいろな面で支えていただいて、無事に展覧会開幕にこぎつけることができました。作家さんのご協力は本当にありがたかったです。
また、実は、展覧会を担当していながら、展示が完成したときにはどんなふうになるのか、正直、イメージしきれていなかったところがありました。ところが、作品を搬入し、開梱して並べていくうちに、思った以上ににぎやかで、パワフルで、開放的で、いろんなものがごった煮状態ながらも、どこか芯の通った展示になったように思われて、本当に「作品に救われた!」と、嬉しく、ほっとした次第です。こうした経験も、いつか振り返ればきっと私自身のタカラになるのでしょう・・・。
さて、9月には作家さんのトークイベントも予定しています。この展覧会について、また震災後のご自分のことについて、「いまここで」語っていただき、その「いまの思い」をみんなで共有し、今後につなげていくことで、この展覧会を締めくくれたらいいなと思っています。