vol.53 旅の支度 ― 美術品の輸送・梱包
主任専門学芸員 吉田尊子
2014.11
当館での「舟越保武彫刻展―まなざしの向こうに―」は、当館所蔵品のほかに、美術館や所蔵家、ご遺族からお借りした彫刻58点、ドローイング約80点で構成されています。いつもの常設展示とは異なり、展示空間も違えば配置も違います。何より、舟越保武さんの生涯と作品を一つの流れとして通して展観できるのは、舟越保武という作家のこと、作品のことがよく見えて、我々にとっても新しい発見や評価が出来る大きな収穫だと思っています。
さて、この舟越展は巡回展なので、当館の会期終了後、作品の状態チェックを行った後に、撤収、梱包して次の会場の美術館に輸送、搬入します。美術品を梱包したり展示したりする作業は、美術品取扱い専門の作業員さんたちにお手伝いいただきます。一般的に、展覧会の前後の作業は、時間が限られていますし、美術品は脆弱なものが多いため、作品の取扱いはプロの手に委ねられます。とりわけ彫刻作品は大型だったり重量があったりと、手がかかります。我々学芸員は、作業の進み具体をみながら、次の段取りをしたり、安全に作業が行われているかを確認しながら作業を監督します。
輸送するための梱包のやり方は、素材や形態によって異なります。舟越さんの場合は石、ブロンズが主な素材です。
石の作品は重量があるため、輸送用の箱も段ボールではなく、もっと堅牢な木製の箱を用意します。木箱の内側には、衝撃を防ぐための緩衝材が貼られているのが一般的です。作品を納めた後のスキマには、綿を薄葉紙でくるんだ綿枕などで詰め物をし、そして蓋をビス止めして封をします。
ブロンズ作品は、頭像のような小さなものでしたら、そのまま綿枕で包み、段ボールの箱に納めます。およそ100センチ以上、等身大とかそれ以上のものは、木製の枠を作って納めます。そして前後左右の要所に養生した板を当てて固定し、輸送中にがたつかないようにします。
作品の取り扱いには細心の注意を払いつつ、養生、梱包し、安全に輸送できる形に整えていきます。そして美術品輸送専用のトラックに積み込み、搬出します。美術品輸送専門の車両には、エアサスペンションとエアコンが付いているのが大きな特徴です。特に冬のこの時期、場所を移動することによる結露が心配ですので、トラック内でも一定の温度を維持することが大事です。結露がNGなのは、作品に結露して水滴がついてしまうと、シミになったり、それがもとでカビや錆を誘発する原因にもなりかねないからです。美術品の輸送はいろいろ気を遣うことが多いのです。
最後に、作品を積んだトラックには学芸員や展覧会関係者が同乗して、目的地まで送り届けるのが一般的です。次の美術館内に搬入されるのを見届けます。
当館の舟越保武作品を一度にこんなにたくさん(30点あまり)を、長い期間(来年9月半ばまで)館外に送り出すのは初めてのこと。我が子を旅に出す親のような心境になりますが、行く先々でも多くの方にご鑑賞いただければ、そして何か心に留めていただけるなら、それで言うことはありません。いってらっしゃい! そして無事の帰りを待っています。
さて、この舟越展は巡回展なので、当館の会期終了後、作品の状態チェックを行った後に、撤収、梱包して次の会場の美術館に輸送、搬入します。美術品を梱包したり展示したりする作業は、美術品取扱い専門の作業員さんたちにお手伝いいただきます。一般的に、展覧会の前後の作業は、時間が限られていますし、美術品は脆弱なものが多いため、作品の取扱いはプロの手に委ねられます。とりわけ彫刻作品は大型だったり重量があったりと、手がかかります。我々学芸員は、作業の進み具体をみながら、次の段取りをしたり、安全に作業が行われているかを確認しながら作業を監督します。
輸送するための梱包のやり方は、素材や形態によって異なります。舟越さんの場合は石、ブロンズが主な素材です。
石の作品は重量があるため、輸送用の箱も段ボールではなく、もっと堅牢な木製の箱を用意します。木箱の内側には、衝撃を防ぐための緩衝材が貼られているのが一般的です。作品を納めた後のスキマには、綿を薄葉紙でくるんだ綿枕などで詰め物をし、そして蓋をビス止めして封をします。
ブロンズ作品は、頭像のような小さなものでしたら、そのまま綿枕で包み、段ボールの箱に納めます。およそ100センチ以上、等身大とかそれ以上のものは、木製の枠を作って納めます。そして前後左右の要所に養生した板を当てて固定し、輸送中にがたつかないようにします。
作品の取り扱いには細心の注意を払いつつ、養生、梱包し、安全に輸送できる形に整えていきます。そして美術品輸送専用のトラックに積み込み、搬出します。美術品輸送専門の車両には、エアサスペンションとエアコンが付いているのが大きな特徴です。特に冬のこの時期、場所を移動することによる結露が心配ですので、トラック内でも一定の温度を維持することが大事です。結露がNGなのは、作品に結露して水滴がついてしまうと、シミになったり、それがもとでカビや錆を誘発する原因にもなりかねないからです。美術品の輸送はいろいろ気を遣うことが多いのです。
最後に、作品を積んだトラックには学芸員や展覧会関係者が同乗して、目的地まで送り届けるのが一般的です。次の美術館内に搬入されるのを見届けます。
当館の舟越保武作品を一度にこんなにたくさん(30点あまり)を、長い期間(来年9月半ばまで)館外に送り出すのは初めてのこと。我が子を旅に出す親のような心境になりますが、行く先々でも多くの方にご鑑賞いただければ、そして何か心に留めていただけるなら、それで言うことはありません。いってらっしゃい! そして無事の帰りを待っています。
巡回予定 | 郡山市立美術館 2015年1月24日〜3月22日 |
練馬区立美術館 2015年7月12日〜9月6日 |
木枠に作品を納めます
このようになります
動かないように養生をした板を当てます