vol.43 アート・シネマ上映会のこと
主任専門学芸調査員 杉本聡
2014.1
アート・シネマ上映会は、月に1度、第3日曜日に開催している映画の上映会です。これを担当して4年目、映画についてド素人の私の一番の悩みは、1年間の上映作品を決めることです。そもそも、「アート・シネマ」というネーミングが表すように、美術や芸術に関する映画を上映し、広く、美術の楽しみや素晴らしさを紹介していく事業と理解しています。
今年度は、企画展の開催に合わせ、いわさきちひろ展で「いわさきちひろ〜27歳の旅立ち〜」、アントニオ・ロペス展で「マルメロの陽光」を上映しました。どちらも来館者の方々から、とても良かったという声をいただきました。
アート・シネマ上映会の様子
また、当館としての特色を出そうと上映しているのが、今年度で2回目になりますが、無声映画の活動弁士の語りによる上映会です。映画の一時代を築いた、映像と生の語りが一体となった映像芸術は、現在はむしろ、新鮮な感覚で楽しめると感じております。
上映作品を決定するに当たり、いろいろいな条件をクリアしなければなりません。そのもっとも大きなものは、著作権の問題です。「マルメロの陽光」の上映に当たっては、上映権の所在が不明であり、最終的には制作国のスペインにまで連絡をとり、上映の可否について確認をしました。
上映にこぎつけるまでに、いろいろとありますが、担当者のモチベーションを保たせてくれるのが来館の皆様から寄せられる声です。自信を持って上映した作品を、たくさんの方々に見ていただいたとき、またとても良かったという声をいただいたとき、思わず「やったぁ」と心の中で叫びます。しかし、時としてお叱りやこの作品の上映意図がわからないという声も頂きます。そんな時、ちょっと落ち込みますが、これも大切な声と思っておりますし、最近ではそういう声があってよかったとも思います。芸術の解釈や評価は人によって違ってよいと思っております。感想や意見が二分される作品こそ、上映する価値があるのではないかと思うようにもなってきました。
「美術館で映画を」を合言葉に、多くの方々が鑑賞しにに来られることを待ち望んでおります。