vol.4 未知との遭遇
主任専門学芸調査員 主濱建明
2010.8
ワークショップ 《カラダ★クロッキー》 活動風景
名作映画のタイトルを借りてしまいましたが、当館のワークショップ《カラダ★クロッキー》に参加された方は、まさにこんな気分だったのではないでしょうか。企画担当者も、どんな《場》ができあがるのだろうかと、期待と不安が入り混じっていました。
「近代日本洋画の巨匠 黒田清輝展」では、展覧会の楽しみ方を広げられるよう、講演会やワークショップ、夏休みスペシャル鑑賞会なども企画しています。《カラダ★クロッキー》は、ワークショップ「人を描く」シリーズのひとつで、小学生以上を対象とした参加体験型のイベント。県の内外から20名の皆さん(6〜73歳!)が参加してくださいました。講師の荒川直美さんは、高校・大学生の新体操の指導も手がける、青森県在住のダンスインストラクターです。
まずは荒川さんによる《カラダ》のレクチャー。ストレッチに始まり、体操や武道、ダンスなどさまざまなカラダの姿勢や動きを示していただき、参加者も一緒にカラダを動かします。背筋や腕、足を思い切り伸ばし、曲げ、自分のカラダを感じます。皆さん真剣な表情で…だんだんキツくなってくる方もいらっしゃいます。「ちょっと痛くて気持ちイイところで止めてくださいね」
同時に、別のグループは、荒川さんや参加者のカラダの動きを観察し、《クロッキー》をします。短時間で、ひといきに、おおまかに形をつかむ描き方。次々に紙をめくりながら描いていきますが、慣れないと難しい。「動いてる人を描くのは大変…」
昼のひとときは、黒田清輝展の担当学芸員による《ギャラリートーク》。展示作品のうち、デッサンや構想画など、人物を主題とした作品の解説を聴きながらの鑑賞タイムです。
最後に、長さ5m、2枚の大きな紙が登場。参加者全員で、腕を大きく使い、次々に人のカラダを描いていきます。皆さんの手の動きの速いこと!ものの15分で紙がいっぱいになりました。「これは、荒川さんがモデル?キレイ…」
《カラダ》、《クロッキー》、《ギャラリートーク》…3つの組み合わせは、どんな思いをもたらしたのでしょうか。「楽しかった、良かった」という感想もあれば、「キツい、これは難しい」という感想もありました。美術に親しむための、アプローチの一つとして?また、1日限りの未知との遭遇として?美術館ならではの体験の記憶として残していただければ幸いです。