vol.35 Jakuchu’s here! And Mr.and Mrs Price are also here!
主任専門学芸員 吉田尊子
2013.05
作品画像 ≪象と鯨図屏風≫(MIHO MUSEUM蔵)と≪鳥獣花木図屏風≫の展示のもよう
昨年春の「ルーヴル美術館からのメッセージ-出会い」に続き、震災復興支援の展覧会である「若冲が来てくれました-プライスコレクション 江戸絵画の美と生命-」が5月18日から当館ではじまりました。初日から多くのお客様で賑わっています。
仙台市博物館でのワークショップの様子 夫妻と子供たち
本展も東北3県での巡回展で、第1会場であった仙台市博物館では、3月1日から5月6日の会期でなんと10万人を超えるお客様が来場されました。これは開催館の関係者の予想をはるかに超える成果で、本展の反響の大きさに驚いています。 さて、この展覧会の成り立ちや内容については、公式ホームページに詳しく述べてあるのでご参照いただくことにして、この展覧会に携わってきた者として、ここでちょっとだけ“自画自賛”してみようと思います。
語彙があまりにも貧弱でお恥ずかしいのですが、この展覧会は本当にすごい、素晴らしい展覧会です。何がすごいかと言うと、まず、文句なしに作品が素晴らしいです。若冲作品の質と数は個人コレクションでは世界一。若冲だけではありません。長沢芦雪や鈴木其一ら、若冲以外の作家の作品も本当に素晴らしく、見れば見るほど、知れば知るほど、作品の世界に引き込まれてしまいます。画家の名前や評価ではなく、作品本位で選んでこられたプライスさんのコレクションの魅力を改めて感じられる内容です。
次に、この展覧会を実現させたプライス夫妻の「本気」がすごいと思います。夫妻の日本、東北への強い思いが、ここまで人やものを動かしたのだ、ということを実感しています。
おそらく我々日本人以上に日本の美術を愛してやまないジョーさんと、そのジョーさんを支えつつ、日米両国の社会の狭間で苦労されながら、二人三脚でコレクションを育ててこられた悦子夫人。そんなお二人の、日本への思いは並々ならぬものがおありでしょう。そこに3.11の大震災が―。
悦子夫人曰く、震災後のショックで硬直した心とからだをほぐしてくれたのは、ほかならぬ若冲の≪鳥獣花木図屏風≫だったそうです。生き物たちの楽園を描いたあの作品の、色彩のチカラに心身が癒される体験をされたお二人は、東北での展覧会を決意されました。その決意は固く、いろんな困難を乗り越え、また多くの協力者も得て、2年越しで展覧会の開催を実現されました。その不断の情熱とバイタリティには本当に驚かされます。私たちは準備の段階で、プライス夫妻のこの展覧会にかける「覚悟」のようなものをひしひしと感じる場面がありました。覚悟を決めた人の本気というのは、とてつもないパワーを生み、人の心を突き動かしていくものなのだということを知りました。私は、プライス夫妻から美術を楽しむことだけでなく、人として大切なことをたくさん教えていただきました。
私たちがプライス夫妻の本気に応えるために出来ることは、いい展覧会を開催し、夫妻の思いやメッセージを東北の子供たちへ届けるために努力することに尽きるでしょう。展覧会は無事にオープンしましたが、ミッションはこれから、です。
本展は岩手の次には福島県立美術館に巡回します。福島はいまも原子力災害の影響下にありますが、「なんとか福島を応援したい」とプライス夫妻はおっしゃいます。夫妻の本気がさらに多くの人々の共感を呼ぶに違いありません。
東北に若冲が来てくれました。
江戸絵画のスターたちがほかにもいっぱい来てくれました。
そして、プライス夫妻もここに来てくれました。
心からありがとうを言います、ジョーさん、悦子さん。
Thank you !
江戸絵画のスターたちがほかにもいっぱい来てくれました。
そして、プライス夫妻もここに来てくれました。
心からありがとうを言います、ジョーさん、悦子さん。
Thank you !